COIN TOKYO

  • 2018/03/14
  • コイン東京編集部

仮想通貨とキャッシュレス社会への展望ーフィンテック専門家による独占コラム

仮想通貨とブロックチェーン

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仮想通貨とキャッシュレス社会
仮想通貨のビットコインに対する投資への興奮が冷めやらず、また2018年1月26日に仮想通貨みなし事業者のコインチェックから約580億円にのぼる仮想通貨「NEM」が流出する騒ぎが起きたことは既に述べました。そうした中、仮想通貨とそれを支えるブロックチェーン技術に対する新たな議論が登場しはじめています。今回は「仮想通貨とブロックチェーン技術の再評価」に関して述べたいと思います。(文:山崎秀夫)

1、 投資としての仮想通貨、決済手段としての仮想通貨

~仮想通貨の持つ投資機能と決済機能との管理を分割せよ~

まず重要な点は仮想通貨の持つ投資機能と決済機能とを分けて評価すべきすべき点です。
これまでの2017年4月に施行された改正資金決済法を含む仮想通貨の議論では両者が混同されていました。わかりやすく申し上げれば、ビットコインなど仮想通貨は「株式類似の投資物件」なのか、それとも円やドルのような支払いの為の決済手段などかと言う議論です。2014年2月に発生したマウントゴックス事件(ビットコインに対するハッキングによる約470億円の資金流出)の後、改正資金決済法が作られました。しかし、法改正から1年もたたない2018年1月、今度は仮想通貨交換所のコインチェックから約580億円にのぼる仮想通貨「NEM」が流出しました。これでは一体、何のために法律改正したのかわからないと言う議論が起こっています。

これは現在のビットコインなどの規制を改正資金決済法から株や為替取引を管理する金融商品取引法に移管すれば解決します。改正資金決済法には為替が変動しない決済の要素(例えば 三菱UFJフィナンシャル・グループによるMUFGコインのように円とのレートが一対一に固定された仮想通貨)だけ残せば済む話です。筆者は早晩、仮想通貨の持つ投資の役割は、金融商品取引法に移管されることになると考えています。

仮想通貨とブロックチェーン技術の議論の分離

~仮想通貨の議論とブロックチェーン議論を分離せよ~

次に重要な点はアフタービットコインと言う書籍(アフター・ビットコイン: 仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者、中島真志著)でも述べられている通り、金融に関わる仮想通貨の議論とそれ以外の領域でも適用可能なブロックチェーン議論を分離して考えるべき点です。仮想通貨の通しの議論は兎も角、ブロックチェーン技術は、今後幅広い商取引領域で採用され、ビジネス世界を大きく変える可能性があるからです。

そもそも仮想通貨は紙でも発行できます。
1998年、カナダ、オンタリオ州のトロントだけで通用するトロントドル(カナダドルとの交換レートは1対1)が発行され話題を集めました。これは紙の商品券に類似した一種の仮想通貨です。非営利団体のトロントドルコミュニティ社が発行した地域通貨でしたが、2008年現在でも約150の小売業がトロントドルを受け入れています。仮想通貨は地域振興券的な色彩を持ったものや新たに相互扶助的な人間関係を創造し、互恵の為のエコマネーとして地域通貨のアプローチで注目を集めていました。紙で発行された仮想通貨の場合は、ブロックチェーン技術は全く関係ありません。分散記帳も無関係です。

但し、国内の改正資金決済法上は電子的な仮想通貨(円などに対してレートが変動するもの)を仮想通貨の管理対象としている点は覚えておいてください。

またインターネット上などでもゲームの世界で仮想通貨が登場しました。日本でも一世を風靡した有名な仮想空間の「セカンドライフ」ではリンデンドルが仮想通貨として登場し、ドルとのレートの変動もさることながら、ゲーム内だけで通用する一種の商品券(前払い式支払い手段)として活用されていました。これにもブロックチェーン方式は使用されていません。

ブロックチェーン議論の深化

~ブロックチェーンの可能性をビジネス監査論と技術論に分けて議論せよ~

次にブロックチェーンに関してはビジネス監査論と技術論に分けて考えるべきです。

そもそも現在、仮想通貨を支える技術としてブロックチェーンとは技術論とビジネス論(取引の認証・監査論、プルーオブワーク)が混然一体となって様々な意見が戦わされているところに問題があります。確かにブロックチェーン技術が実現した分散帳簿方式(ブロックチェーンのビジネス側面)は非常に有効かつ将来性にある技術です。ブロックチェーン技術により取引帳簿が様々なサーバー上に分散記帳されれば、取引履歴の改ざんが許されない為、ビジネス上の業務監査や会計監査には非常に有効な「透明性が確保」されます。

会計監査の仕事をご存知の方には当たり前かもしれませんが、会計事務所にとってみれば、会社の業務が不透明なブラックボックスであればあるほど値段がバカ高い「監査時間」を稼げる仕組みになっています。

その為、世界の会計事務所はブロックチェーン技術が実現した「分散帳簿方式が普及すれば、公認会計士事務所の仕事があらかた消える」と各社共、恐れています。昨今、日本企業によるガバナンスが問題になっています。その典型と思われる東芝事件に見られるように会計事務所は、会社組織の業務の在り方がさっぱりわからない「ブラックボックス」になっているからこそ監査時間を稼ぎ、多額の報酬を得ていました。

それが消えてなくなると言うわけです。だからブロックチェーン技術が実現する分散認証制度と複数の団体が管理できる取引帳簿の分散記帳により透明性さえ確保すればビジネス監査の問題は解決し、企業は安全だと言う安全神話が生まれました。(これはビジネス監査論の視点からは正しい判断です。)

一方ブロックチェーン方式の技術の観点から見た安全性に関しては、全く別の話です。ブロックチェーン方式が採用している公開鍵暗号方式(こうかいかぎあんごう、Public-key cryptography)とは、暗号化と復号に別個の鍵(手順)を用い、暗号化の鍵を公開すらできるようにした暗号方式が使われています。

仮想通貨は公開鍵暗号などの暗号方式により、財布(ウオレット)上で分散管理されていますが、この暗号を複数組み合わせていたにもかかわらずハッキングが可能となり、資金流出が起きました。またビットコインに採用されているブロックチェーン技術は、10分程度単位のバッチ処理を行っている為、瞬間的な取引規模の拡大(スケーラビリティと言います)にどこまで耐えられるか未知数です。

そしてビットコインに見られるマイニングに起因する分裂の問題もあります。こういった視点からは、ブロックチェーン技術は(将来の高い可能性を秘めた)未だ未成熟な技術と申せましょう。


(山崎秀夫)電子マネー革命がやって来る!
【山崎秀夫】
1949年(昭和24年)生まれ。72年東京大学経済学部卒業後、三井情報に入社し、海外システム担当。80年代初頭には三井物産ロンドン支店に勤務、欧州へのソフトウェアの輸出を経験。86年野村総合研究所入社、シニア研究員。2014年退社。Beat Communication顧問等を務める。

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