イングランド銀行や日本銀行、米国の連邦準備制度などの中央銀行は、国家の金融政策を設定し、インフレ率を管理し、「最後の貸し手」として行動する機関です。国際通貨基金(IMF)の最近の報告書によると、世界の中央銀行のうち15社がこのCBDCを真剣に受け止めており、他の多くは少なくとも模索しているという。
この傾向には3つの主な理由があります。まず、新たなデジタルマネーが「現金の役割を縮小」するという事。次に、アンバンクト(銀行口座を持たない何億人もの人々)が現代の金融サービスにアクセスする手段(金融包括)としてです。最後に、ほとんどの中央銀行は、紙幣をデジタル紙幣に置き換えることの、コスト削減性を見出しています。
中央銀行がデジタル通貨に興味を持つ事は理にかなっています。暗号資産を含む新しい支払い技術は、世界の金融システムを変えつつあり、中央銀行は、その影響を理解する必要があります。暗号通貨は技術に信頼を賭けようとしています。透明性があり、技術に精通していれば、そのサービスを信頼するかもしれません。IMFのクリスティン・ラガルド専務理事はスピーチで以下のように述べています;
「マネーそのものが変化している。規制を超えて、国家はマネーのために市場で活発な存在に留まるべきか?それは現金の後退で出来た隙間を埋めるものか?より具体的に言えば、中央銀行が新しいデジタル形式のマネーを発行すべきか?」
ラガルド氏のコメントは市民と国家との関係について、より根本的な疑問を提起している、とMITのデジタル通貨イニシアティブのリサーチャーで、イングランド銀行の元リサーチャーRobleh Ali氏は述べています。
「政府は、一般市民にリスクフリーのマネーを提供する義務または責務を負っているのか?現金の使用量が減少した後、その義務は持続するのか?」
スウェーデンの中央銀行Riksbankは今この問題に取り組んでいます。スウェーデンではモバイルペイメントアプリの人気が急速に高まっており、Riksbankのリサーチャーは、大半の小売業者や家庭で、数年のうちに物理的な紙幣が受け入れられなくなると考えています。
Riksbankは最近、民間のペイメント市場の代替案としてE-krona(イークローナ)について議論しました。スウェーデンの非常に人気のあるモバイルペイメントアプリ「Swish」は、6つの商業銀行に支えられ、私的な利益に影響されるため、ペイメント市場が安定しない可能性があります。スウェーデンの通貨システムに対する基本的な信頼を損なうリスクもあます。
中国人民銀行(PBOC)も積極的にデジタル通貨を開発している様です。昨年、デジタル通貨研究所を立ち上げ、最近は現金よりもハンドルコストが安く、追跡が容易な新しい形のマネーを作り出すために、暗号専門家を募集しています。PBOCはまた、ウルグアイ、セネガル、チュニジアの金融機関と同様に、金融包摂を根拠として挙げています。
独自のデジタル通貨を発行する予定の中央銀行は、複雑で技術的な問題に取り組む必要があります。Ali氏は以下のように述べています;
「集中管理型インフラに依存するのか、分散型の暗号資産のように機能するのか?政府は、暗号通貨で出現したイノベーションをどの程度まで扱うことができるだろう?そしてどの側面が適切ではないか?ブロックチェーンシステムは、より弾力性に富む可能性がありますが、現在の設計は非効率的でスロウです。それはまた、現金とは異なり、匿名ではない傾向があります(透明である)。」
最後に、中央銀行によるデジタル通貨導入のリスクは十分に理解されていません。1つの重要な要因は、中央銀行が伝統的に市中の銀行口座を提供していないこと。商業銀行によって保有される卸売口座のみです。このダイナミックな変化は、何らかの形で商業銀行業界を混乱(革新)させる可能性があります。例えば、金融危機の際に、多くの人々が商業銀行を放棄し、より信頼できる中央銀行口座に彼らの資金を移動させる、銀行の取り付け騒ぎを誘発する可能性があると示唆する人もいます。
しかし結局のところ、中央銀行の準備にかかわらず、新技術は金融システムを混乱させるだろう。アリ氏は語ります。「ある種の変化が起こることは明らかです。しかし、現段階でそれがどのように起こるかは誰も知らない。」
最近、アラブ首長国連邦の中央銀行(CBUAE)とサウジアラビアの金融規制当局は、新たな共通の暗号通貨の構築に取り組んでいる事が報じられました。両国の分散型台帳の概念実証(PoC)は主に、参加者間の中央銀行資産(暗号通貨)の所有権の移転に重きを置いています。
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