最初にステーブルコインとは何かを詳しく紹介します。仮想通貨投資をしていると必ずといっていいほど耳にするワードなので、しっかりチェックしておきましょう。
ステーブルコインを簡単に説明すると「価格が変動しない仮想通貨」です。フィアットや特定の仮想通貨に価格を連動させるなどの方法で一定の価値を保ち、価格が変動しないようにしています。
一例としてフィアットを担保とした場合は1コイン=1USD、1コイン=1JPYなどのように特定のフィアットの価格に連動する仕組みになるでしょう。
予想外の値動きが発生する可能性が高い場合、一時的に資金を退避させたい場合などにステーブルコインを利用することができるので、使いみちはさまざまといえます。
ブロックチェーンを利用した送金や決済を利用する際にステーブルコインが役立ちます。一般的な仮想通貨の場合、価格変動するというリスクがあるため、決済に使うためには向いていいないといえるでしょう。
しかし、ステーブルコインは価格が変動しないので価格変動のリスクなしに決済手段の1つとして利用することができます。
そのため、世界中の多くの企業がステーブルコインに注目しています。有名なところではFacebookが独自のステーブルコインを開発中です。
Facebookが発行する予定のステーブルコインは「Libra」と呼ばれ、フィアット担保型のトークンになる予定になっています。利用者の多いFacebookが発行するステーブルコインなので世界中から注目されていて、今後に期待できるといえるでしょう。
このように銀行や大手企業が注目する仮想通貨がステーブルコインです。
続いてステーブルコインの仕組みと種類について紹介します。ステーブルコインには大きく分けて「フィアット(法定通貨)を担保とするもの」、「仮想通貨を担保とするもの」、「無担保型」の3種類が存在しています。
最初に見ていくのはフィアット(法定通貨)を担保とするステーブルコインです。2019年6月時点で発行されているフィアット担保型のステーブルコインはアメリカドル(USD)を担保とするものが多くなっています。
Tether(USDT)とはアメリカドルを担保とするステーブルコインの一種で、1USDT ≒ 1USDです。
この仕組みはとてもシンプルで、USDTを発行するTether社が発行するUSDTの量と担保として保有するUSDの量を同じにすることによって担保しています。
USDTは仮想通貨の一種であるため、ブロックチェーン技術を使って銀行送金などより安価に世界各地に送金することができるのがメリットです。そのため、企業間送金や決済手段として使われることが期待されています。
TUSDは前述のUSDTと同様にアメリカドルを担保とするステーブルコインで、1TUSD≒1USDになります。
しかし、USDTは担保となるUSDを本当に保有しているのかが疑問視されるなど、ステーブルコインの信頼性の面に疑問が投げかけられたことがあります。しかし、TUSDは監査を行い、担保となるアメリカドルを保有していることが確認されました。
したがって、USDTより信頼性のあるUSD担保型のステーブルコインといえるでしょう。
ステーブルコインにはフィアットを担保にするものだけでなく、仮想通貨を担保にするものも存在しています。仮想通貨担保型のステーブルコインには以下のようなものがあるので、参考にしてください。
Maker DAOはイーサリアムを担保にしているステーブルコインです。なお、Maker DAOではDAIと呼ばれるステーブルコインも発行しており、こちらはアメリカドルを担保とするステーブルコインになっています。
イーサリアムを担保にするものとアメリカドルを担保にするものの2種類が発行されているのが特徴といえるでしょう。
BitSharesはSmartCoinという機能を実装しており、これによってフィアットや金、ビットコインなどと連動するステーブルコインを発行できます。
なお、アメリカドルを担保とするものはbitUSDと呼ばれ、ビットコインと担保とするものはbitBTCと呼ばれます。
SmartCoinの価値は、SmartCoinとして発行するトークンの価値の175%以上のBTSを預け入れることによって担保される仕組みです。
ステーブルコインの中にはフィアットなどと価格が連動するものの、担保となる資金を持っていないものもあります。このようなステーブルコインの例は以下の通りです。
BASISはアメリカドルに連動するステーブルコインですが、担保となるアメリカドルを保有する代わりに供給量を調整する仕組みが採用されています。
具体的には、アメリカドルに対してBASISの価値が低くなった場合は供給量を減らし、高くなった場合は供給量を増やすために新たなトークンを発行するという仕組みです。
これによって担保となる通貨を保有せずにアメリカドルの価格に連動するステーブルコインを発行することが可能になっています。
CarbonUSDはアメリカドルに連動するステーブルコインの一種です。EOSのスマートコントラクトを利用して発行されており、こちらも発行量を調整することで価値を安定させる仕組みになっています。
次に、ステーブルコインを購入できる取引所を見ていきましょう。何らかの理由でステーブルコインに交換する必要が出た場合はここで紹介する取引所を使ってみてください。
覚えておくべきポイントとして、「ステーブルコインは投資対象にならない」というものがあります。
フィアットや特定の仮想通貨、金や銀などの物資の価格に連動するように価値が調整されている仮想通貨なので、仮想通貨投資における投資先として向いているとはいえないので注意しましょう。
ステーブルコインは価格急変リスクに備えたり不安定な値動きが予想される際に資金を退避させるために使うのが基本であると覚えておいてください。
2019年7月時点でステーブルコインが上場されている日本国内の取引所は存在していません。USDTなどの主要なステーブルコインを含めて上場されていないので注意してください。
そのため、ステーブルコインに資金を退避させる場合は国外の取引所を利用しなければなりません。送金に時間や手数料がかかるので、急いで資金退避させる場合には十分に注意してください。
マルタ共和国を本拠地とするBinanceはいくつかのステーブルコインを上場しています。Binanceでトレードできるステーブルコインは以下の通りです。
・USDT
・TUSD
・PAX
Binanceでトレードしている場合は多くのトークンをこれらのステーブルコインに直接交換できるので、いざというときの資金退避先として覚えておいてください。
OKExでもステーブルコインを上場しています。OKExに上場されているステーブルコインは以下の通りです。
・USDT
・USDK
こちらもBinanceと同様に取り扱っている通貨ペアが豊富なのでトレードしやすいといえるでしょう。
続いてステーブルコインのメリットとデメリットを紹介します。ここで紹介するメリットとデメリットをしっかり比較した上で、ステーブルコインに交換するのかフィアットに交換するのかを選択してください。
ステーブルコインのメリットは主に次の通りです。
ステーブルコインの価格はフィアットや特定の仮想通貨など、何らかの資産に連動します。したがって、資産価値が安定するのが最大のメリットといえるでしょう。
仮想通貨投資に回している資金をリスク回避のために退避させる場合、他の仮想通貨に交換すると価格変動リスクがあります。しかし、ステーブルコインに交換すれば価値が安定してるのでリスクが小さいといえるでしょう。
上記のUSDT/USDのチャートを見ると、若干の値動きはあるもののほぼ1USDT=1USDで推移していることがわかるでしょう。
フィアットを担保にしているステーブルコインの場合、担保になっているフィアットの代替通貨としての役割を果たすことができます。
一例として、100,000 USDを支払わなければならない相手に銀行送金で支払うと手数料や時間、手間がかかり大変です。しかし、USDTで支払えばブロックチェーンを利用して短時間で送金が完了し、かつ手数料も安くなるでしょう。
このようにフィアットの代替通貨として世界中で送金や決済に使われる様になることが予想されています。今後ますます存在価値が高まっていくことでしょう。
もちろんステーブルコインにもいくつかデメリットがあるので、あらかじめしっかり押さえておいてください。
フィアット担保型のステーブルコインは「発行したステーブルコインの量に対応するフィアットを発行元が保有することによって価値が担保される」ものです。
そのため、中央集権的なトークンであるといえ、発行元が不正行為などを行えばすぐに価値がなくなってしまうでしょう。したがって、発行元を信頼しなければ利用できないというデメリットがあります。
一例として、2018年にはUSDTの発行元の信頼性が問題視され、一時的に1USDT=0.85USD程度まで下落しました。これは担保となる資金を保有していないのではないかという疑問が出たことによるものです。
このようにステーブルコイン発行元が信頼できない場合はすぐに価値が下落したり、場合によっては0になるというリスクもあります。
さまざまなメリットとデメリットがるステーブルコインですが、仮想通貨が発展していく上では非常に重要なトークンといえるでしょう。
トークンが通貨としての役割を果たすためには、以下の「通貨の3大機能」を満たしていなければなりません。
・価値の尺度
・価値の交換
・価値の保存
ビットコインなどの仮想通貨はボラティリティが高く、決済手段としても使いにくいことからこれらの条件を満たしていないとの見方もあります。しかし、ステーブルコインはこれらの条件を満たしやすいため、通貨として認められやすく、広く使われるようになる可能性があります。
投資手段としての仮想通貨としてではなく、決済手段としての仮想通貨の道を開く重要なトークンといえるでしょう。
ステーブルコインの現状をチェックすると、いくつか注目したいポイントが浮かんできます。ここではそれらのポイントについて見ていきましょう。
リップルのネットワークを利用したステーブルコインの構想があり、「USDX」と呼ばれています。
このステーブルコインはアメリカドルの価格と連動するものなので、USDTなどと似たような立ち位置になると考えられるでしょう。
前述の通り、Facebookはアメリカドル担保型のステーブルコインとして「Libra」を発行する予定です。
2019年7月時点では開発中ですが、無事に発行されるようになればFacebook内での標準決済手段として大いに使われるようになるかもしれません。
なお、Libraについては日本の金融庁も声明を出しており、「仮想通貨には当たらない可能性が高い」と考えられています。
銀行もステーブルコインの発行を予定しています。2019年7月時点で発行を予定、または検討している日本の銀行は次の通りです。
三菱UFJ銀行はMUFGコインというステーブルコインを開発しています。これは1MUFG=1JPYになるように価値が調整されるステーブルコインです。
日本円と連動するタイプのステーブルコインはこれまでに存在していないので、注目される可能性が高いといえるでしょう。
みずほ銀行はJコインと呼ばれるステーブルコインを開発しています。こちらも前述のMUFGコインと同様に日本円と連動する形のステーブルコインです。
MUFGコインとどのように異なるのか、どんなトークンになるのかに注目していきましょう。
一部の仮想通貨取引所でも独自のステーブルコインを発行しています。今回はその中からBinanceとGMOコインの例を見ていきましょう。
Binanceでは、独自のDEX(分散型取引所)としてBinance DEXを運営しています。Binance DEXはBinance Chainという独自のブロックチェーン上で動いているもので、同チェーン上でUSDSBというステーブルコインを発行しています。
元になったトークンがUSDSなので、USDSBもアメリカドルと価格が連動する形のステーブルコインです。
GMOコインはGMO Japanese YEN(GJY)というステーブルコインを発行する予定です。これが無事に発行され、GMOコインでトレードできるようになれば国内取引所として初めてステーブルコインを取り扱う取引所になるかもしれません。
ステーブルコインは基本的にアメリカドルなどのフィアットと価格が連動する仕組みになっています。そのため、価値が安定して決済に使いやすいというメリットがあるといえるでしょう。
したがって、ステーブルコインの認知度が上がり、多くの人が保有するようになれば決済手段としての仮想通貨に注目されるようになるかもしれません。
2019年時点では投資手段としての役割が強い仮想通貨ですが、決済手段として使えるようになればもっと多くの人が注目することでしょう。いくつかデメリットもあるものの、全体としてステーブルコインの将来は明るいといえそうです。
ステーブルコインを巡る今後の動きにはしっかり注目していきましょう!
今回はステーブルコインについて詳しく見ていきました。価値が安定しているために決済に使いやすく、また価格変動時の資金退避先としても優秀なトークンです。
ステーブルコインは今後もさまざまな場面で活用されるようになることが予想されるため、しっかりチェックしておきましょう。
また、日本円と連動するタイプのステーブルコインの開発も進められているので、こちらが実用化されれば日本在住者にとってもっと使いやすくなるかもしれません。
いずれにせよ、ステールブルコインは仮想通貨の今後の発展のためにも非常に重要なものなので、今後の動きに要注目です。
20代男性、都内有名大学卒業後、貿易会社を経て独立。前職中に暗号通貨にハマる。現在はweb関連事業を行う傍ら、仮想通貨やFXトレードも兼業。好きなものはガジェット、ゲーム、自転車。暗号通貨や相場のことを分かりやすく説明することを得意とする。