ダウ理論はテクニカル分析の基礎と呼ばれ、仮想通貨市場・株式市場・FX市場などさまざまな市場でトレードするのに役立ちます。ダウ理論には以下に掲載する6項目の基本原則が存在するので、しっかり理解しておきましょう。
それぞれの原則についてわかりやすく簡単に解説するので、ぜひ参考にしてください。
平均価格は市場を左右するさまざまな要素を反映した結果だといわれています。
仮想通貨市場を例にして考えると、世界経済の動き・投資家の売買行為・当該トークンの将来性や開発の進捗状況などを反映して価格が決まっているといえるでしょう。
平均価格が全ての事象を反映しているということは、価格の推移を示したチャートをしっかり分析することによってトレードの勝率を上げられることを意味しています。
仮想通貨・株式・FXなど、どの金融市場に参戦する場合でもこの原則が当てはまるので、投資する際にはチャートの動きをしっかりチェックしてテクニカル分析を活用しましょう。
ダウ理論の2つ目の原則は、トレンドには短期・中期・長期の3種類があるというものです。それぞれの期間は概ね次の通りです。
短期・中期・長期それぞれのトレンドで値動きが異なることがあり、短期では下降トレンドを示していても長期で見ると上昇トレンドになっていることもあります。
そのため、投資スタイルに応じて最適なトレンドに注目するようにしてください。
デイトレードのように短期で売買する場合は短期トレンドを、特定の仮想通貨をしばらくホールドする予定なら長期トレンドを見るようにするのがいいでしょう。
チャートも短期から長期まで揃っているので、適切なものをしっかりチェックするようにしてください。
主要トレンドは以下の3段階に分かれます。
1.先行期
2.追随期
3.利食い期
それぞれのトレンドを見極めることがとても重要なので、どんな特徴があるのかをしっかり覚えておきましょう。
先行期とは3段階のうちの最初の段階にあたるもので、概ね大機関投資家が市場に参入し始める時期に見られるトレンドです。
先行期によく見られるチャートの動きは「緩やかな上昇」です。価格が大きく上昇する前兆と見られますが、実際に参入する場合には本当に価格が上昇する要素が大きいのかをしっかり判断しましょう。
場合によっては次の段階に繋がらないこともあります。
追随期は前述の先行期で価格が上昇した結果、多くのトレーダーが市場に参入することによって大きく価格が上昇する時期のことを示しています。
先行期の価格推移がうまく追随期に繋がると、さらに多くのトレーダーに注目される原因になるので、価格上昇に期待できるでしょう。この段階でチャートを見ると、明確な上昇トレンドが形成されています。
トレンドの最終段階は利食い期と呼ばれ、機関投資家は先行期に比べて大きく価格が上昇した銘柄を売却する動きをします。
上昇トレンドを見た多くのトレーダーが市場に参入してきますが、同時に先行期や追随期に当該銘柄を購入したトレーダーは利確するでしょう。そのため、これまで続いてきたトレンドは緩やかになっていき、やがて終了します。
その後はレンジ相場への突入やトレンドの転換などが考えられるため、利食い期に差し掛かったと判断したら次の投資戦略を考えるのがオススメです。
ここで購入してしまうとジャンピングキャッチになってしまい、トレンドが転換して価格が下がると塩漬けせざるを得なくなります。トレンドに乗る際には利食い期に差し掛かっていないかに注意してください。
さまざまな金融市場には相関する価格推移が見られる銘柄があります。仮想通貨市場ではビットコインと主要なアルトコイン、イーサリアムとERC20トークンなどが挙げられるでしょう。
このように相関性のある銘柄を抽出し、相互に価格推移をチェックすることでより強いトレンドを見つけ出すことができます。信頼できるトレンドなのかどうかをチェックする際には、相関する銘柄を合わせてチェックしてください。
相関性の高い市場に似たような価格推移が見られない場合、そのトレンドは短期で収束してしまうかもしれません。
「トレンドには出来高が伴う」というのも基本原則の1つです。チャートを分析していてトレンド相場になっていると判断したら必ず出来高もチェックしましょう。
出来高が伴っていれば信頼できるトレンド相場、伴っていなければ短期で収束する可能性が高いトレンド相場またはダマシであると判断できます。
また、出来高に注目すればトレンドが継続する可能性が高いのか、それとも終了する可能性が高いのかを判断するのにも役立つでしょう。出来高が伸びていれば継続、減少していれば終了の兆しと判断できます。
トレンド相場が終了してレンジ相場に移行したり、転換したりする場合には明確なシグナルが発生します。主なシグナルとして知られているものは以下の通りです。
このように明確なシグナルが出た場合はトレンドが転換する可能性が高いので、エントリーする際には十分に注意してください。とはいえ、ダマシになっていることもあり、転換するように見せかけて元のトレンドが継続することもあります。
そのため、ダウ理論のサインと合わせて他のテクニカル指標も合わせて総合的に判断するのがオススメです。
トレーディングツールにはダウ理論に関連するサインを表示してくれるインジケータが存在しています。インジケータを使えばダウ理論に関連するサインがわかりやすくなるので、自分で明確に判断できるようになるまではこれらのツールを使うのもいいでしょう。
トレーディングツール「Meta Trader 4(MT4)」にはZigZagというインジケータが標準で搭載されています。
ZigZagは高値と安値を結んでくれるインジケータで、これを利用すればダウ理論や後述するエリオット波動を見分けやすくなるでしょう。MT4に標準搭載されているツールなので使いやすく、初心者にもオススメです。
ダウ理論についてしっかり学ぶならぜひ使ってみてください。
続いて実際のトレードでダウ理論を活用する場合に覚えておきたいポイントをチェックしておきましょう。見方をしっかり覚えておけばトレンドを見抜きやすくなり、エントリーポイントを判断するのに役立ちます。
最初にダウ理論を利用してエントリーポイントを見分ける方法をチェックしていきましょう。基本的なエントリーポイントは次の通りです。
これを上記のチャートで見た場合の考え方は以下の通りです。
エントリーポイントを探っている場合、まずは直近の安値と高値に水平線を引いておきましょう。そうすることによって、安値および高値を切り上げ/切り下げた際に気づきやすくなります。今回は安値Aと高値1にラインを引きました。
直後に見られた安値Bは安値Aより高いため、「安値の切り上げ」を確認できたといえるでしょう。その後の価格推移を見ると、矢印で示したあたりで価格が上昇し、高値1を上抜けています。そのため、このあたりがエントリーポイントといえるでしょう。
エントリーした後は、トレンドが転換する兆しがチャートに発生しないかどうかに注目してください。特にスキャルピングをする際はトレードのタイミングがシビアになりやすいので注意しましょう。
続いて上記のチャートを例にしてトレンド転換の判断ポイントをチェックしていきましょう。
チャートをチェックすると、最初の頃は安値・高値ともに切り上げてきているので上昇トレンドにあると判断できます。
しかし、安値Aと安値B・高値1と高値2を見ると両方とも切り下がっている事がわかります。このタイミングをもって上昇トレンドが終了したと考えられるでしょう。
この場合に考えられる価格推移は次の3パターンです。
1. 上昇トレンドが終了し、下降トレンドに転換する
2. 上昇トレンドが終了し、レンジ相場に移行する
3. 一時的なダマシで、上昇トレンドが再開する
ダマシになることもありますが、高値・安値ともに転換のシグナルを見せている場合はトレンドが終了し、レンジ相場が逆方向のトレンドに移行する可能性が高いといえます。
したがって、上昇トレンド中に買いエントリーしている場合は安値・高値共に切り下がったことを確認したタイミング(高値B付近)が売りのチャンスと考えられるでしょう。
また、トレンド転換のシグナルに注意しておけばジャンピングキャッチを避けやすくなります。
ダウ理論では複数の時間足のチャートを用いるのが大切です。短期トレンドを判断するためには5分足・15分足・30分足などを活用できるでしょう。
15分足は5分足チャート3本分の値動きがまとまっているチャートと考えられます。さまざまな時間足のチャートを相互にチェックし、トレンドの方向や強さをチェックしていきましょう。
もちろん、長期チャートを見る場合でも日足チャートと週足チャートを組み合わせるなど、さまざまな方法があります。
ローソク足チャートを見てダウ理論を使う場合、実体に注目すべきかヒゲに注目すべきかの判断に迷うかもしれません。ダウ理論を利用する場合はチャートに波形を描くことが多く、描く場合にはヒゲにも注目するのがいいでしょう。
「とりあえずヒゲを利用して波形を書きし、詳しく分析するときは実体とヒゲの違いをチェックする」という運用がオススメです。また、波形の書き方を考える際には「数本のチャートをまとめてチェックする」と考えるとより判断しやすくなるでしょう。
ダウ理論はテクニカル分析の基本ですが、単独で利用しても勝率は上がりにくいでしょう。そのため、ダウ理論と共にクランビルの法則を活用するのがオススメです。
安値で買おうとした場合、どこが安値になるかを判断するのは難しく、場合によってはそのままトレンドが転換してジャンピングキャッチになってしまう場合があります。
それによる損失を避けるためにも、買いのエントリーをする場合は戻り高値を上抜け、高値が切り上がったことを確認してからエントリーするのがいいでしょう。
利益は小さくなるものの、トレードの勝率を上げられるため損失が出にくくなり、オススメのエントリー方法です。
FXや仮想通貨など、金融市場におけるテクニカル分析の基本といわれるダウ理論ですが、これだけでトレードに勝利するのは難しいといえるでしょう。ダウ理論にはいくつか欠点があるので、しっかり覚えておくことをオススメします。
ダウ理論においては「押し安値を下抜けなければ上昇トレンドが継続」・「戻し高値を上抜けなければ下降トレンドが継続」・「トレンドはシグナルが出現するまで継続する」という基本原則がありました。
しかし以下の場合にはこれが当てはまらないので注意が必要です。
ブロードニングフォーメーションとは、高値を切り上げつつ安値を切り下げるという値動きのパターンです。これが発生した場合、いずれはどちらかに動いてトレンドが発生すると考えられますが、どちらに動くのかが判断できません。
ダウ理論によって一旦上昇トレンドにあると判断した場合でも、ブロードニングフォーメーションが見られるようになることもあるので注意してください。これが見られた場合はエントリーポイントではありません。
ダウ理論のもう1つの弱点として「エリオット波動」が挙げられます。エリオット波動とは以下のような特徴をもつ値動きです。ここではエリオット波動について解説するので、上記のチャートを見ながらチェックしてみてください。
上昇トレンドになっている場合に波形を描くと、以下の5波が出現することが多くなっています。
第1波: 価格上昇
第2波: 価格下落
第3波: 価格上昇
第4波: 価格下落
第5波: 価格上昇
このように上昇と下落を繰り返しつつも、高値・安値ともに切り上げていきます。
5波から成る推進波の次は、3波から成る修正波が出現します。修正波の構成は以下の通りです。
第1波: 価格下落
第2波: 価格上昇
第3波: 価格下落
この3波によって高値・安値ともに切り下がります。
5波の推進波と3波の修正波の組み合わせがエリオット波動のワンセットで、上昇トレンドが継続する場合は再びエリオット波動が出現することがあります。
このようにエリオット波動が出現した場合は下降トレンドに転換したように見えます。しかしながら、そのまま上昇トレンドが継続することもあるのでダウ理論の原則から外れ、大きな弱点といえるでしょう。
ダウ理論をトレードに活用する場合、前述のブロードニングフォーメーションと合わせてエリオット波動にも注意してください。このような現象があることを覚えておきましょう。
ダウ理論は1800年代に開発された古典的かつ基本的なテクニカル分析なので、これをメインに取り上げた書籍も存在しています。もし、書籍でダウ理論について学んでみたい場合は以下がオススメです。
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FX超入門 ダウ理論を理解して値動きの本質を掴む: ダウ理論だけで勝つ |
ダウ理論解説本 |
こちらはダウ理論の基本についてわかりやすく解説した書籍なので、ぜひチェックしてみてください。
ある程度理解したら実際のチャートをチェックし、トレードすることでもっと深く理解するのがいいでしょう。実践するとより多くのことを学べるので、ぜひFXや仮想通貨市場に挑戦してみてください。
ダウ理論についてより深く勉強するためには、実際のチャートを利用して波形を書き、価格推移について考えるのがオススメです。
まずは過去のチャートを見て分析し、将来の価格がどうなるかを考えてみましょう。続いて実際にどうなったかをチェックし、ダウ理論と値動きの相関性を考察します。
そうすることによって、ダウ理論から予想した値動き通りになることもあれば、エリオット波動やダマシなどによって予想通りに値動きにならないこともあることがわかります。
このように実践である程度コツを掴んだら、最新のチャートを見て実際にエントリーしてみるのもいいでしょう。トレードは実践が一番いい勉強法なので、チャートをチェックして実際にトレードするのがオススメです。
基本を学んだら余剰資金などを活用し、市場に参入してみてください。トレードを繰り返していくことによって、極めることができるでしょう!
今回はテクニカル分析の基本「ダウ理論」について詳しくチェックしていきました。いくつか弱点があるものの、チャートをチェックする上で非常に重要な指標であることが理解できたかもしれません。
ダウ理論を他のテクニカル指標と組み合わせて使うことによってトレードの勝率を上げられるので、ぜひ活用してみましょう。
20代男性、都内有名大学卒業後、貿易会社を経て独立。前職中に暗号通貨にハマる。現在はweb関連事業を行う傍ら、仮想通貨やFXトレードも兼業。好きなものはガジェット、ゲーム、自転車。暗号通貨や相場のことを分かりやすく説明することを得意とする。