2020年10月22日、ビットコインは強力なレジスタンスライン132万円台をあっさりと上抜き、138万円台の高値をつけています。
132万円台を突破したのは昨年の6月以来で約16か月ぶりとなります。
昨年6月以降はコロナショックによる暴落を除くと、ほぼレンジ相場の中の動きとなっていましたが、底堅い動きを見せていたビットコインは遂に強い抵抗ラインを突破しました。
週足チャートで値動きを確認しておきましょう。
週足のボリンジャーバンドでは、コロナショック後の4月後半にミドルライン(センターライン)を上抜いて以来、ミドルラインをサポートライン(支持線)として緩やかに上昇していたのが見て取れます。
MACDも同じく4月後半からゴールデンクロスしており、9月相場ではわずかにデッドクロスするものの、ボリンジャーバンドのミドルラインがサポートしているのが見られます。
週足のMACDは先週からわずかにゴールデンクロスしており、今週の上昇相場を暗示していたようにも思えます。
さて、何故これほどあっさりと強力なレジスタンスラインを突破して年初来高値まで更新 してきたのでしょうか?
今回の相場上昇が本物であるならば、ビットコイン上昇の理由にはそれなりの背景があるはずです。
年初来高値を更新したビットコインですが、ビットコイン以外の投資市場は非常に難しい相場環境を迎えようとしています。
コロナショック以降のビットコインの堅調な相場展開には、ハイテク関連株中心のヘッジファンドによるリスクヘッジとしての安全資産投資によるビットコイン買いがあるといわれています。
実はその株式市場が大きな転換点を迎えようとしているのです。
米国株式市場では、恐怖指数と呼ばれるVIX指数が30を超える水準まで上昇しています。VIX指数が30を超えているということは、ボラティリティが非常に高く危険な状況、暴落の可能性が高いということを示しています。
日本の株式市場にも同様の動きが見られます。
コロナショック以降、日本の株式市場のけん引役であり、先行指数としての役割も果たしてきたマザーズ市場が急落しているのです。
マザーズ指数のチャートも確認しておきましょう。
コロナショック以降、株式市場のけん引役となり急騰していたマザーズ指数は、先週2018年1月高値の1367ポイントを1ポイント抜く1368ポイントの高値をつけました。
この形は、いわゆる「一文新値」と呼ばれるもので、「鬼より怖い一文新値 」つまり相場の急落を意味する投資格言として知られています。
案の定、その後は高値更新からの売りが徐々に増え、10月22日には急落相場となりサーキットブレーキが発動されることとなりました。
このように、世界の株式市場が難しい状況となりつつある中で、ビットコインのみが独歩高したというのが10月22日の状況といってよいでしょう。
見方としては、株式市場が目先下落することに備えたヘッジファンド等の投資家による安産資産ビットコイン買いが起こっているとも考えられるのです。
過去のビットコイン相場は、少しばかり上昇したものの大量の売り物に簡単に値を崩されてしまうという展開が長く続いていました。
ほぼゼロ円からスタートしたビットコインが240万円近くまで暴騰したのですから、それも致し方ないと多くの投資家も考えていたでしょう。
ところが、ここにきて顕著に売り物が減少している流れがあり、需給関係に大きな変化が見られるようになったと考えられます。
もともとガチホ投資が多い市場にヘッジファンドが参入してきたというのが大きな理由でしょうが、10月22日にこれまでのレジスタンスラインであった132万円をあっさりと抜けたことからも先高期待も相当強いと思われます。
ヘッジファンドの参入で、ビットコインの需給関係に変化が生じているのであれば、ヘッジファンドによる売りが懸念されます。
基本的には、ヘッジファンドは毎年12月半ばから決済売りを実施し利回りを確定させます。つまり、このままビットコインが上昇トレンドを維持すると考えるのであれば、12月までは保有する可能性は高いでしょう。
現在、新型コロナウイルスの第2波が世界を襲っている状況で、米国、インド、ブラジルをはじめ、欧州などでも再びの緊急事態宣言やロックダウンが噂されています。
株式が買いずらい状況下、世界中に有り余っている投資資金はどこに向かうことになるのでしょうか?
137万円台まで急騰したビットコインですが、次に意識される価格帯はどのあたりになるのでしょうか?
その前に、これまでレジスタンスラインとなっていた132万円台が、今後はサポートライン(支持線)となる可能性があり、仮にここを割り込まずに140万円台に入るようなら相当強いと考えてよいかもしれません。
執筆時点でのビットコインは、134万円台まで押し135万円前後で揉み合っています。
ここも週足チャートで確認してきましょう。
ビットコインの週足チャートに、2017年12月高値(237万円台)から2018年12月安値(35万円台)のフィボナッチリトレースメントを記しています。
レジスタンスラインとなって機能していた132万円台は、このフィボナッチリトレースメント50%の水準となっており、相当多くの投資家が意識していた水準であったことが分かります。
このフィボナッチリトレースメント50%の水準をあっさりと上抜いたということは、「半値戻しは全値戻し」の格言から、次はフィボナッチリトレースメント61.8%の水準(156万円台) が意識されることになります。
2019年6月は、このフィボナッチリトレースメント61.8%の手前で値が崩されたことになります。
日足チャートで目先の動きを確認したところ、さらに面白い事実がありました。
チャートは、日足のビットコインのボリンジャーバンドです。
日足ボリンジャーバンドからは、バンド幅が急拡大し+2σラインを上抜いて138万円近くまで急騰したビットコインは、その後134万円まで下落したところから135万円台まで戻しています。
やはり、132万円台が強く意識されているのが分かります。
今後、132万円台まで下落することなく上昇していくのか、あるいは、132万円台前後での攻防戦が繰り広げられるのか、いずれかの動きになると思われます。
この記事を執筆しているのは10月22日、11月3日まで後11日というところですが、この11月3日には米国大統領選挙という世界中の投資家が大注目するビックイベントがあります。
株式市場に暗雲が立ち込めている大きな理由の一つが、この米国大統領選挙であることは間違いないでしょう。
ここで気になるのは株式市場の暴落で、大統領選挙前、または結果を見てから株式市場が暴落する可能性は低くはないでしょう。
ビットコインホルダーとして注意したいのは、暴落による換金売り(現金化)の流れで、コロナショック時にも起こったように、現金化のために含み益のあるビットコインは格好のターゲットとなる可能性があります。
コロナショックの際にも、安全資産相場である金相場なども大量の売り物を浴びていますので要注意です。
新型コロナウイルスは世界経済を大きく減速させることになり、各国は緊急経済対策を実施し大量の資金が世界中に出回ることになりました。
この大量の金余り状況は、「不景気の株高」現象を作り出し、米国のNasdaq市場は史上最高値を更新し、日本のマザーズ市場は「仮想通貨相場の再来か?」と言われるような上昇相場を展開しました。
しかしながら、ここにきて株式市場に多くの下落兆候を暗示するサインが出ており、株式市場に投資しにくい状況が続きそうです。
リスクオンからリスクオフ、投資家はリスクヘッジとして安全資産に投資せざるを得ない状況となりそうです。
いち早くコロナショック後の高値を上抜いた金(ゴールド)相場が、その後に史上最高値を更新するまで買われたように、ビットコインもひょっとすると行きつくところまで買われる のかもしれません。
40代男性。大手証券会社、大手通信会社の経営管理を経てセミリタイヤ。職務経験から、広く事業や経済動向、株式・先物・為替市場に精通。長らく株式トレードを行い、暗号通貨は2017年から。仮想通貨だけでなく、ビジネスや世界マーケットを絡めた視点から大人の分析ができるビジネスマン。